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「白夜映画祭」@下高井戸シネマ
カテゴリー: 小林宏彰

6月19日木曜日、下高井戸シネマのレイトショー「白夜映画祭」に行ってきた。
今回の「白夜映画祭」は、検閲の非常に厳しかったソ連の映画監督を中心に、2007年の山形国際ドキュメンタリー映画祭の話題作も上映される、大注目のイベントだ。

僕が見たのは、オタール・イオセリアーニ監督の、『歌うつぐみがおりました』。1970年に制作された映画である。題名から、もうすでに面白そうな雰囲気を発しているこの作品について、ぜひご紹介させていただきたい。
主人公は、楽団のシンバル奏者、ギア。音楽の才能はあるのだが、遅刻の常習者で、女の子ばかり追い掛け回しているお調子者である。ある日、ついに怒り出した支配人?に呼び出されるのだが、やっぱり指定された時間には現れない。でも、愛すべきこの男は、けっきょくクビにはされないし、現れれば取り合いになる人気ぶりを保つ。ラスト近く、パーティーでの、ギアの仕切りで突如男たちが歌いだすシーンは、鳥肌が立つ素晴らしさだ。

この監督、旧ソビエトのグルジア出身というめずらしい出自で、のちにパリに亡命している。
同国人として圧倒的に有名なのは、あのスターリンである。
『月曜日に乾杯!』『素敵な歌と舟はゆく』などの名作や、最近では恵比寿ガーデンシネマで『ここに幸あり』という映画が公開されたので、ご存知の方も多いと思う。おひょいさんが予告編のナレーションをよくやっている、あれである。

その作風は、「人生力を抜いて生きましょう」というか、いわゆる「ノンシャラン」と
形容される飄々とした空気が流れているのが特徴。ただ、中原昌也氏と松浦寿輝氏が『映画の頭脳破壊』で指摘していたように、単なる楽天家ではなく「人生の苦い肯定」とでもいう雰囲気が、そこには流れている。
それは、「人間は否定するが、人生は肯定しようとする」という、なんとも奥深い姿勢である。「平成日本の人々には、贅沢すぎる作品」なんて蓮実重彦氏は評すが、たしかにヨーロッパという長々と文明が堆積した地で育ち、一筋縄ではいかない人生を送ったからこそ、たどりついた境地なのかもしれない。『歌うつぐみ~』の恐ろしいラストシーンは、そういった意味でとても象徴的で、考えさせられる。
とはいえ、もちろん現代の日本人が見てもじゅうぶんに楽しめるし、よりたくさんの方に見てもらいたい。どの作品も本当に洒脱で、これぞ人生! という実感が、観る人に湧いてくる作品である。アンドレイ・タルコフスキーにならって、これからは「敬愛する監督は?」と聞かれたときには、高らかに「オタール・イオセリアーニ!」と叫びたいものだと思う。

※「白夜映画祭」は他にも面白い作品がたくさん! 7月12日までやっています!

LINK:下高井戸シネマ

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