CINRA.NET CINRA MAGAZINE CINRA RECORDS exPoP!!!!! CINRA MAGAZINE Volume17

愛情たっぷりヘビメタ批評
レビュー:たけだひろかず
構成:柏井万作
「ヘビメタなんてうるさいだけでしょ?」
好きじゃない人からすれば、ヘビメタなんて暴走族とさほど変わらずただの「騒音」。
だがしかし、物事の真実と価値を伝える「批評」はそんな偏見を正してくれる、はずだ。
ヘビメタをこよなく愛し、ロック雑誌にも寄稿しているたけだ氏のヘビメタレビューは、女子大生の偏見を解きほぐすことができるのか!?

ルール
1. 「ぴあ」的レビュー(一般的なレビュー文)を読み、ヘビメタの重要作品を聴いてもらう。
2.たけだ氏の「愛情たっぷりヘビメタレビュー」を読み、改めてアルバムを聴きなおしてもらう。
3.たけだ氏のレビューによってヘビメタの魅力は体感できたのか? コメントを頂く。

被験者:Hさん
21歳大学生。女子。ただいま就活中。
オリコンチャートも普通に聴きます。ヘビメタは…
SLAYER 『REIGN IN BLOOD』 (1986年)
(「ぴあ」的レビュー)
このアルバムを聴いて体が反応しなかったとしたらアナタにヘヴィーメタルを聴く資格はないといっても過言ではない。地獄の底から叫んだ鋭利なナイフのようなサウンドが貫かれた作品。スラッシュメタルの魅力がたった30分の中に濃密に詰め込まれ、力強く勇ましく男臭く爆走している。

(愛情たっぷりヘビメタレビュー)
もしあなたが何がしかの犯罪に手を染めたとして、自宅のCDラックにあるこのアルバムを見つけられてしまったとしたら、事件は過度にオカルト化するだろう。死、血、逆さ十字、全てが悪魔に帰結するこの音楽は、安易な否定が可能だ。そして、バンドはそれを歓迎してしまうだろう。なぜなら、その「悪意」への悪意という二重構造が表現の糧になっているからだ。勘違いしてはいけないのは、彼らに悪魔崇拝の気など全く無いのである。分かりづらいかもしれないが、表層的な題材は内面で蠢く憎悪を明瞭にするための道具でしかない。不器用ではあると思う。怒りを表現するにあたってこの音像を貫くのは愚直で隠し方を知らないと言える。しかし、その怒張が健気にも見えやしないか。このアルバムは歴史を変えた。その意志は無かったと読む。怒鳴り散らしていたら、余りの勢いに同走者が遠慮して結果として独り残され、先駆者に相成ったのである。
被験者Hのコメント
before
正直疲れた。朝、支度にもたもたしていたら母親に「早くしなさい!」って部屋にいきなり怒鳴り込まれて、「だからあんたって子は・・・ぶつぶつ」と言われているような気持ちになった。
after
なんでそんなに怒ってんの? と不思議だったが、たけだ氏のレビューを読んだら、そのいらだちの理由がわかった。怒鳴ってしまうのは、不器用だからなのか。その後は、ダアアアアアアアイ!って聴こえるたびに笑いがこみ上げてくる。抑えられない衝動、心の声をそのまま叫んじゃったんですね。自分の気持ちに素直なんだ。ちょっとかわいいじゃないですか(笑)。
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METALLICA 『MASTER OF PUPPETS』 (1986年)
(「ぴあ」的レビュー)
今やヘヴィーメタルバンドを代表するバントとなった彼らの出世作が、この86年発表の3rdアルバム。どこまでも早く突き進むギターサウンドでメタルキッズの頭を振り回した伝説の一作だ。90年代以降、ヘヴィロックバンドのバイブルとなった作品は今聴いても何一つ色褪せることは無い。

(愛情たっぷりヘビメタレビュー)
歴史を振り返る中で、そのバンドの化ける瞬間が音から漏れ伝わってくる地点がある。その時代に流れていた音楽を塗り替えてやる、という意識は、常にラディカルな音となって表出する。このアルバムにはその地点の瞬間が詰まっている。1ランク上げるという意図ではなく既存を塗り替えるという攻撃心は当時こそ冒険的だったかもしれないが、メタリカというブランドが良くも悪くも定着した現在から振り返ると、白を黒に反転させるために、微細に至るまでいかに突き詰めたのかが解る。リフの交錯がストイックに曲を凝縮させていく。早いだけと揶揄されたバンドが、なぜ早いのかに回答を出したアルバムからは、聴く度に冷凍保存を解凍する鮮度が幾度となく訪れる。
被験者Hのコメント
before
SLAYERに比べたら聴きやすいですね! 演奏が規則正しくて、意外と真面目な人達なんだろうなぁと想像する。

after
なんで早いのか、わたしにはわからないけど、早いことに価値があるんだなぁということは感じ取れた。うーん、たとえば、濱田マリのナレーションのような。そういえば、このバンドのTシャツを着ている人をよく街で見かけますが、少し前までそういうブランド名だと思っていました。
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IRON MAIDEN 『POWERSLAVE』(2002年)
(「ぴあ」的レビュー)
JUDAS PRIESTと並ぶ、言わずと知れたイギリスの老舗バンド。和訳すると「鋼鉄の処女」、拷問器具をバンド名にした攻撃的な音楽は、これぞメタル! という要素をあちこちに盛り込んでいる。ブルースのヴォーカル、スティーヴのベースサウンド、そして華麗に飛び交うギターのメロディーが、パワフルに響き渡る!

(愛情たっぷりヘビメタレビュー)
このバンドにはプライドという言葉が良く似合う。英国というロックの発祥地には伝統という言葉がつきまとうが、その伝統を体内で消化して培養し続けるバンドとして、このバンドに敵う者は見当たらない。ヘヴィーメタルという音楽を、ロックという産物をより強固に肉体化させた音楽だと考えれば、その内容証明がこのバンドという事になる。節々にダイナミズムを盛り込んだ分かりやすいサウンドの背景から誇示されるのは、常に画一的でブレないプライドである。来年デビュー30周年を迎えるこのバンドが、黄金期と称される時期に入ったとされるのがこのアルバム。1曲目「Aces High」のイントロが、言葉を待たずしてその宣言を代弁するかのように、この音楽の旨みを内包している。
被験者Hのコメント
before
おお、おおおおお。凄い。もう、曲の違いがよくわからない。やりたくもないスポーツに無理やり付き合わされた上、スポーツマンシップの宣誓を目の前でうけているような感覚。お兄さん暑苦しいよ!

after
なるほど「プライド」ですか。燃えてなんぼですか。交通道路の「一時停止」のところで、物陰に隠れて取り締まる国家権力に捕まったとき、そういうやり場のない怒りを発散したいとき、心にアイアン・メイデンを。彼らが怒りを代弁してくれる。音楽の新しい聴き方を見つけたような気がします。
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HELLOWEEN 『KEEPER OF THE SEVEN KEYS PART1』 (1987年)
(「ぴあ」的レビュー)
このアルバムを発表した時、ヴォーカルのマイケル・キスクはなんと18歳だった。ジャーマンメタルというジャンルを孤軍奮闘で世に広めた彼らももはやオジサン(笑)、しかし彼らの背中を追ったバンド達が芽生えリスペクトを表明する事で、彼らの重要性は日に日に増すばかり。日本上陸から20年、まだまだ誰も彼らを超えられない。

(愛情たっぷりヘビメタレビュー)
ヘヴィーメタルは時として極端なハイトーンヴォイスを発する。この声への拒絶反応は強い。しかし、この声を1つの楽器として考えてみたらどうだろう。それは何も声自体やそこから紡がれる歌詞を軽視しているわけではない。総体として勢いを保たせる音楽、をメタルの一義とするならば、このハイトーンヴォイスはその理由であり材料となる。マイケル・キスクの伸びやかな歌声は、声量・表現力という観点ではなく、いやその観点を一通り乗り越えた上で楽器として機能したとは言えまいか。どこかコミカルでポップソングを肉付けしたかのような取っ付き易さは、ロックの現在に投げ込んだ途端無視されがちではあるが、ではロックの歴史は常にポップと隣接してこなかっただろうかと問わせていただこう。ジャーマンメタルの基軸となったこの作品は、その歴史に対応する一枚であり続けている。
被験者Hのコメント
before
声、高っ!! というのが第一印象。歌うまいですね。年齢を重ねてもこれ出るんでしょうか? そうなんだったら、尊敬します。叫ぶおっさん。B’zの稲葉さんも聴けば嫉妬するだろう。

after
確かに、全身を通って感情が、音に昇華している感じはするかもしれない。音楽と合ってるし。汗やつばがとんでくるのが感じられる音楽なんて面白いかも(笑)。最初「なんだこのやたら厚いコーラスは・・」と思ってたけどコミカルでポップと言われれば納得です(笑)。フィンガー5聴けるならこれもいけますよね、多分。

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OZZY OSBOURNE 『BLACK RAIN』 (2007年)
(「ぴあ」的レビュー)
MTVの番組「The Osbournes」で奇天烈な私生活を公開し一躍お茶の間スターとなったオジーがオリジナルアルバムとしては実に6年ぶりに発表した最新アルバム。どこ切り取ってもオジーらしい楽曲が粒ぞろいで思わずニンマリ。やっぱりこの人には音楽で暴れてもらいたいものだ。祈・来日! 夏フェスなんかどうですか。

(愛情たっぷりヘビメタレビュー)
カート・コバーンは死んだ、しかし、オジー・オズボーンは生きている。イイ歳して自宅の庭でバギーに乗っては8本の肋骨を折って集中治療室に入っちゃうのだが、頭に拳銃を突きつけたりはしない。カリスマのアイコンに相応しい事件はバギーではなく拳銃なのだろうが、果たしてカリスマの証印とは何によって与えられるべきなのか。当たり前だが、音楽である。音楽をやり続けるという具合的な意欲である。来年デビュー40周年を迎える男が老体を引き摺りながら「黒い雨」に濡れている。現時点での葛藤を具象化させると、それがその時代のトレンドとなる。あらゆる肉感を楽器という機械に素直に表現させたヘヴィメタルが持つ根源的な音楽の旨みをオジーのよろよろした不安定なヴォーカルが引っ張っていく。どこかコミカルでありながら堂々と生き長らえる彼の音楽。カリスマという言葉が後から追いかけているが、未だ追いつけないでいる。だからこそ彼はトレンドを作り出すポップスターでいられるのだ。
被験者Hのコメント
before
ジャケット写真が不気味だ…。

after
デビュー40周年ってすごい!! バギーで骨折→集中治療室というエピソードで一気に親近感が湧きました。最初からおじいちゃん声なら、「昔の声の方がよかったなー」なんて言われなくて得なのかも。イメージでは、忌野清志郎さんみたいな感じでしょうか。声が聴きづらかったけど、コミカルといわれればそうかもな、と思い直し、5曲目まで聴くことに成功!
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最後に、「愛情たっぷりヘビメタレビュー」への感想
ヘビメタって確かにうるさいイメージがありましたが、みんな一生懸命なんですね。真摯なんだな〜と。ヘビメタの方々は強面だから気をつかってたけど、「コミカル」って解釈してもよかったのが意外でした。そんなこと言ったらぶっ飛ばされるのかと思ってた。ヘビメタ好きの人が言ってるんだから大丈夫みたい。ちょっと難しい文章もあったけど、ある意味ではヘビメタの重厚さに通じていて、なるほど〜とも思った。皆さんも是非、音楽と一緒にこのヘビメタレビューを読んでみてください! ちょっとだけ、ヘビメタに好感が持てるかも!

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