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アーティストってどんな人?
― 若手作家4人が語る、アートの魅力・作品の魅力 ―

そもそも「アーティスト」って、どんな職業なのかわからないのだ。どうやって稼ぎ、どんな生活を送り、何を考えて作品を作っているのか…
例えば村上隆という、日本人でもっとも有名なアーティストの場合、その作品は●億円なんて超高額で取引されることもある。しかしそんな人でも、30代になるまではアートで生計を立てられずにバイトをしていたというのだから、決して楽な商売ではないんだろう。でも正直、それくらいの認識しか持ち合わせていないのだ。

そこで今回、20代の若手アーティスト4人にこの溢れる疑問をぶつけてみることにした。人里離れた埼玉の山奥に、4人でアトリエを構えている彼らの中には、若手ながら早くも軌道にのってマイカーを所有している人もいれば、バイトをしながら絵を描いている人もいる。どちらにせよ、アートの魅力すら知らない人間にとっては浮世離れした彼ら。語り合えば合うほど疑問と友情は深まっていった…

(取材・文:杉浦太一 撮影:井手聡太/柏井万作)

インタビュー

石井友人 プロフィール
1981 東京都生まれ
2006 武蔵野美術大学大学院造形研究科油絵コース修了

忽滑谷 昭太郎 プロフィール

1981 東京都生まれ
2006 武蔵野美術大学造形学部油絵科卒業

個展
2006 決定と躊躇 (Yoshidate house)
ソラミミ  (中崎透遊戯室)
2007 みみなり (フタバ画廊)

2009年 2月13日〜22日 新宿眼科画廊にて個展開催予定。

 

問谷明希
1980 北海道生まれ
2006 武蔵野美術大学 造形学部油絵学科 卒業
2008 武蔵野美術大学 大学院造形研究科 美術専攻 油絵コース 修了

個展 
2007 個展(武蔵野美術大学課外センター)
2008 二人展(GalleryTeo)
2008 9月24日〜10月11日、PUNCTOMにて個展開催予定

池田光弘
経歴
1978 北海道生まれ
2006 武蔵野美術大学大学院油絵科コース修了

個展
2004 gallery b,Tokyo(東京)
2005 gallery b,Tokyo(東京)
2007 SHUGOARTS(東京)

主なグループ展
2005 新公募展(広島市現代美術館 広島)、優秀賞受賞
    from/to #3(WAKO WORKS OF ART 東京)
2006 4人展(SHUGOARTS 東京)
2007 VOCA展(上野の森美術館 東京)、奨励賞受賞

<座談会>
そりゃもう、やることは1つでしょ(笑)!

―初めて「アトリエ」っていうところに来たんですけど、人数分スペースが仕切ってあって、そこに自分の身長以上の作品がいくつも立てかけてあるっていう、なんとも不思議で新鮮な環境です。みなさん毎日ここに来て絵を描いているんですか?

池田:俺と石井はだいたい昼過ぎに来て、夜中まで描いて、家帰って、また次の日来て、っていうかんじだね。

問谷:私と忽滑谷君は別の仕事をしながら、それ以外の時間はここに来て描いてます。

― じゃあここにいる以外の時間はみなさん何をしてるんですか?

石井:うーん、何やってるんだろ。

忽滑谷:そりゃもう、やることは1つでしょ(笑)!

石井:いや、今日、そういうんじゃないからさ。

忽滑谷:冗談ですよ、冗談。俺は週末だけここに来ているんだけど、DJも好きだから、仕事以外の時間はDJの練習やったり、イベントをつくったりしてるね。

― テレビとか、普通に観るんですか?

石井:うん、家帰って観るね。みんな観てるでしょ?

忽滑谷:観るよ、普通に。別に何か観たい番組があるわけじゃないけど、観てるね。

池田:俺もテレビは観るし、映画もよく観るね。

― なるほど。じゃあ普通の人が仕事してる時に絵を描いていて、家に帰って来たら同じように時間を過ごすっていうかんじなんですね。でも、ずっと絵を描いてるのって大変そう・・・。

忽滑谷:やろうという気持ちはブレないけど、めげそうになったり折れそうになることはしょっちゅう…。

デビューするまでに相当な時間や努力が
必要だと思っていたけど、状況が変わってきた

― ゴッホが自分の耳を切ったっていう話しを聞いたことがありますが、ずっと1人で絵を描いてるんですもんね…。なんだかすごそうだ。でも、そうなるとやっぱり気になるのはお金です。そもそもアーティストってどういう仕組みで食べていってるんですか?

石井:うーん、仕組みかぁ。俺も絵を描いて食べていける仕組みがあるって知ったのはほんとについ最近なんだよね。すごくシンプルに言えば、自分が絵を描いて、それを一緒に仕事をしているギャラリーに納品して、ギャラリーが自分の展覧会をやったり、アートフェア(多数のギャラリーが集まって作品を展示する見本市的なイベント)で作品を紹介して、「コレクター」と呼ばれる人達に作品を売っていく、っていう流れなのかな。でも、そういうちゃんとしたマーケットがあることに自分もびっくりしたというか、自分の想像では、もっとアーティストって悲惨な生活を送ってるんだろうと思ってたんだけど(笑)。

― 「ギャラリー」が、宣伝や販売をする芸能プロダクションみたいなものなんですね。それで石井くんは意外にも、早くからアートシーンやマーケットの中に入れたと。

石井:大学院の時に、学内のスペースで誰に向ってという訳でもなく実験的に作品を発表してた事があって、ちょうどその時に池田君の作品をアートディレクターが見に来る機会があって、俺自身はアートシーンに関してほとんど無知だったんだけど、「自分の作品も観て下さい!」って気合いで作品を見てもらったんだ。そしたら、「じゃあ池田君と一緒に展示会をやろう」って話しになって。

池田:うん、学生の頃、貸画廊(作家がお金を払って一定期間ギャラリーを借りて展示をするための場所)で個展をやった時に、案内のハガキを見てくれたコマーシャルギャラリー(貸画廊とは異なり、所属作家の作品を展示して販売するギャラリー)のオーナーが、展覧会をしないか?と誘ってくれて、結局石井との2人展をすることになった。それまで、コマーシャルギャラリーで発表するまでには相当な時間や努力が必要と思っていたけど、ちょうど自分たちが発表した辺りから、状況が変わってきたじゃないかと思う。

― 20代くらいの人もどんどんアーティストとしてギャラリーに所属するようになったと。

問谷:うん、最近は美大の卒業展示で普通にギャラリストの人が見に来てくれるらしいよね。

忽滑谷:コレクターが直接やってきて、学生と交渉して作品を買ったりすることもあるらしいし、それだけアートのために動く人の数が増えてきているんだろうね。

どうやらやっぱりだいぶ距離があるらしい(笑)

― アートが流行ってるのは、雑誌を見ててもわかるんですが、例えばぼくが作品を買うとしたら、ギャラリーに行くわけですよね。それで、「これください」って勇気を振り絞って言ってみる。それってたぶん、「オシャレだな」とか、「家に飾って人に自慢したいな」とか、そういうすごく普通な欲求から来るんだと思いますが、それはつくる側にとってはどうなんですか? やっぱりちゃんとした人に買ってもらいたいものなんですかね?

池田:いや、そんなことないよ。インテリアも生活を豊かにするためのものだろうし、アートも人を豊かにするためのものだと思うからね。コンセプトは伝わらなくても、その人の生活が豊かになること自体は変わらないから。もちろん「こういうことを考えてつくった」っていうのを分かってもらいたいから発言はしていくけど、それを聞くか聞かないかは、それぞれでいいと思う。だから一般の人であっても、アートの世界の中にいる人であっても、大切に見てくれる人に買ってもらいたいと思うかな。

― その「こういうことを考えてつくった」っていうのが大事だと思うんです。やっぱりただのオシャレで終わらない方がいいと思うんですよ。アートの世界にいないぼくらからしてみれば、その作品のコンセプトを、作品を一目見ただけではわからない。でも、ここにいる4人と今こうやって普通に話しているわけで、その人たちから生まれた絵っていうモノを、完全には理解できなくても、どっかで共通してる考え方とか価値観とか、あると思うんですよね。それがわかれば、もっと面白くなると思う。

石井:俺もそう思ってたんだけどさ、よくよく話しを聞いてみると、どうやらやっぱりだいぶ距離があるらしいんだよね(笑)。普通にこうやって過ごしているとわからないんだけど、言われてみてはじめて「あ、遠い」ってわかるというか。でも、それではいけないと思うから、こうして取材をしてもらってるわけデス!。

― そうかぁ、じゃあちょっと1人ずつ聞かせて下さいよ。どうやってどういう作品をつくっているのかっていうのを。

 

一生懸命語っていただきました
アーティストが自身の作品を語る

 

 

 

取材後記
「やっぱり難しかった」けれど。

「超」がつくほど一生懸命に、自身の表現を言葉で伝えようとしてくれた4人。苦闘を終えた後、彼らはぼくたちにバーベキューをふるまってくれた。

正直な話をすれば、「やっぱり難しい!」というのがぼくの、そして読者の感想だろうと思う。でも、決して「わからない」ものではなかった。それどころか、本質的なところでは、普段からぼくたちが感じている皮膚感覚に近いものも多かったはずだ。

たとえば音楽だったら、「君のことが好きなんだ!」と想いのままに伝えるけど、なんでアートの作り手たちはそうじゃないのか? そんな疑問に明確な答えはないし、そもそも分かりやすく伝わればいいってものでもない。ただ1つ言えるのは、こうやってアーティスト自身が無理を承知で「伝えようとする」こと自体、今のアート業界が、「アートなんて解らない」という受け手からの反発に問題意識を持ち、葛藤している証明なのだろうと思う。だからこの先、アートはもっと素敵な時間をぼくたちに与えてくれるようになるんじゃないか、そんな期待に胸が膨らんだ取材になった。

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