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旅に恋するあなたへ…
エレクトロニカで世界旅行!

いきなり下世話な話しで申し訳ないが、エッチしてオーガズムに達するのは、あまり難しいことではありません。肌で感じて、目で感じて、音で感じて、匂いで感じて、もういっぱい快感がある。要は、「感じる」ために人間には「五感」が備わっている、という話しがしたいのである(「味覚」はさすがに生々しいので割愛)。

「旅」もその五感をフル活用して楽しむものだけど、「エレクトロニカで世界旅行!」ともなれば、使えるのは聴覚だけ。それってつまり、声を聞くだけでイッちゃう、ということです。イケませんよ、普通は。もしイケる人がいたとしたら、そいつは半端じゃない妄想力の持ち主だと思う。変態かもしれない。でもそれって、結構羨ましいとは思わないだろうか? 例え話しが卑猥で共感を得られていない危険性も高いけど、これこそが「エレクトロニカで世界旅行!」の本質なのだ。音楽を聴いて、想像して、感じて、どこかへ行った気分になる。実際にはイッちゃえなくても、なかなか気持ちよかった、くらいまで到達できたとしたら、これほど豊かなヒマつぶしもないだろう。

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ハワイに行きたい、
けどお金がない(ヒマならある)アナタへ

 

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ハワイに行きたい、
けどお金がない(ヒマならある)アナタへ

sora / RE.SORT
2003年9月 (PLOP)
PLIP3009  2,499円(税込)
試聴:http://homepage.mac.com/s_ra/30.html

 

世界地図の上では米粒のごときハワイには、年間で700万人もの観光客が訪れるという。それほどの人が、「リゾート」を求めて世界中から集まってくるのだ。ゴージャスなリゾートホテルに泊まり、心地よい日差しが降り注ぐビーチからコバルトブルーの海と空を眺めていると、仕事も宿題も忘却の彼方へとすっ飛んでいく、らしい。日が暮れればサンセット。空は夕焼けのオレンジ色と黒のグラデーションに染まっていく。心地よい潮風が肌をかすめる。だんだんと、心の奥底、体の真芯から言い知れない喜びがこみ上げてくる…。日々の生活の中で積み重なっていた、当たり前過ぎて意識もしなかった“我慢”。それが一気に解放されるんだから、いいですよね、ハワイ。

そんな魅惑の解放地ハワイへと誘ってくれるCDを1枚紹介するとしたら、これです。soraことクロサワタケシが2003年に発表した、その名も『RE.SORT (リゾート)』というアルバム。再生ボタンを押せばすぐ、ゆったりとした楽曲の中からキラキラと清涼感溢れるポップな電子音が飛び出してくる。優しい電子音の狭間から遠く波の音が聴こえてくると(実際に波の音が収録されている)、行ったことすらないワイキキビーチが、いつか駆けっこをした小学校の校庭のように、懐かしく思い起こされてくるのです。波に反射する太陽。そして真っ青な海と空が広がっていく…。
ここまでの妄想はそう難しくないものの、問題はこの先。聴こえてくる音の隅々に耳を澄ませ、心地よい潮風や、裸体をさらす美女に遭遇したドキドキや、暗闇に浮かぶリゾートホテルの眩い輝きを、自分なりに感じていかなければならない。めげない気力と探究心さえあれば、いつの間にか彼の地へ足を踏み入れられるかも。

 

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南米に行きたい、
けどお金がない(ヒマならある)アナタへ

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南米に行きたい、
けどお金がない(ヒマならある)アナタへ

Matmos / The Civil War
2003年9月 (Matador/P-VINE)
PCD-23429 2,300円(税込)
試聴:http://www.myspace.com/matmos1

 

旅好きを自負する人は多いが、南米まで行ったという人はあまりいない。正確な理由は分らないが、日本からすれば地球の裏側。往復するだけでも出費がかさむため、旅行会社もメディアも手を出しにくい土地なのかもしれない。
しかし、だからこそ南米を踏破する喜びは大きい。空中都市マチュピチュや地上絵ナスカ、マヤの遺産にインカの古道でハイキング! そしてもちろん、世界最大の大河アマゾン川流域で原住民と文化交流…。南米には、我々の文明では解析不能な未知なる世界が待ち受けている。たとえその謎を解き明かしたとて、世界はちっとも変わらずに、粛々と日常がやってきては過ぎ去っていく。それなのに、秘められた謎の一端に触れてみたいと思うのは人間の性なのかもしれません。ロマンを心に宿す南米旅行、胸が躍るじゃないですか。

南米旅行のエスコート役Matmosは、サンフランシスコで音楽を作っている男二人組。整形手術の音をサンプリングして使っちゃう、いわゆる「変態」でありラブラブな二人なんだけど、ビョークのサウンドメイキングを手掛けるなど実力はアンデス級だ。「アメリカとイングランドの原風景を重ね合わせた音楽」(Matmos談)だという『The Civil War』。多用された民族楽器の調べは確かに前時代的な風景を思い起こさせてくれるが、相変らずわけのわからない電子音が謎で、ネジが外れている彼らの世界観など到底常人には理解できるはずがないのでした。でもそれってほら、実に南米的でエキゾチック。楽しくて怖くて圧倒的で謎だから、Matmosの音楽を探求するのは、秘められた謎を解き明かすロマンに満ちあふれている。ただし、帰ってこれなくなる危険も高いので要注意。

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フランスに行きたい、
けどお金がない(ヒマならある)アナタへ

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フランスに行きたい、
けどお金がない(ヒマならある)アナタへ

no.9 / Usual Revolution And Nine
2008年8月 (Liquid note records)
LNR004  2,310円(税込)
試聴:ARTIST INDEXページへ

世界で最も観光客を集める地フランス。特にパリはリピーターが多いらしいけど、ノートル・ダム寺院にエッフェル塔、シャンゼリゼ大通りに凱旋門…などなど、数え切れないほどの名所がある上に、ルーヴル美術館だけでも回り切れないんだから、一回の旅行で満足し切れないのもわかる話だ。歴史ある古い街並の美しさも格別で、どんなヘタクソでも、シャッターを切ればそのまま絵はがきになるという。パリジェンヌにパリジャン、街を歩いているだけで自分がオシャレだと勘違い。「美」というスパイスをふんだんに振りかけられて、とにかくオシャレなんです、パリ。

「オシャレの旅」というのはなかなか難問だが、今号のARTIST INDEXでも紹介している城 隆之によるソロプロジェクトno.9が適任かもしれない。聴いてるだけで「自分オシャレじゃん!」と勘違いできる、魔法の音楽なのだ。ピアノやギターをテクニカルに演奏することもあれば、それらを細かく切り刻んで再構築もする。そうして作り出されたサウンドは、長い歴史や芸術文化によって培われたパリの街並に似た気品がある。そして、琴線にふれるメロディーがとにかくスウィートなのだ。ヒルズ族の令嬢もこれなら満足。格式高さと、それでいて気取らない親しみやすさを兼備えたパリの空気が香ってくる。その中にはもちろん、忙しない大都市の日常を感じさせてくれるリズミカルな曲もあるし、ゆったりと街中を流れる美しきセーヌ川の穏やかな調べも聴こえてくるだろう。まず間違っても神田川ではない。
「オシャレ」にしても「カッコいい」にしても、それを裏付けているのは「美意識」だ。美意識を刺激してくれるno.9の音楽で、あなたもパリジャン。

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インドに行きたい、
けどお金がない(ヒマならある)アナタへ

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インドに行きたい、
けどお金がない(ヒマならある)アナタへ

Fennesz  / Endless Summer
2001年7月 (Mego)
mego 035  2,310円(税込)
Myspace:http://www.myspace.com/fennesz

「自分探しの旅」の目的地として有名なインドも、若者を中心に人気のある旅行地。異文化なんてのは日本国外どこでも体感できるけど、なんでインドが「自分探し」に有用かって、この国の「雑多さ」が理由らしい。中国に次ぐ10億人以上の国民は、様々な人種や民族、言語や宗教が入り交じっているし、貧富の差も激しいため、世界でも他に類を見ないほど多種多様な人々の営みにふれることができる。自分の常識が通用しない世界で、そして歴史的にも哲学が根付いている国で、物思いにふけってみる旅。本当の自分、見つかっちゃいます。

でも、刺激を求めてインドに行くというのなら、こちらとしては楽な仕事になる。カオスを求め、自分の知らない価値観を受け入れようだなんて、好奇心旺盛で素晴らしいじゃないですか。あなたなら本当に、聴覚だけでイッちゃえるかもしれない!

ということで、最後に紹介するのはエレクトロニカを代表する名盤でもあるFenneszの『Endless Summer』。かなりディープにトリップさせてくれるアルバムでして、そのサウンドを単純化すると、ゴーとか、ガーとか、ブチブチブチといったノイズの洪水です。古舘伊知郎あたりが聴いたら本当にプチプチ切れてしまいかねない実験的なサウンドだけど、「ノイズなのに泣けちゃう」のが本作を偉大な作品たらしめる理由。普通に考えれば、ノイズ(雑音)なんて聴きたくないかもしれないが、そんな自分の価値観を妄信して簡単に「嫌だな」なんて思ってたら、インドに行っても「汚ね〜」としか思えないだろう。実はその中に、自分が忘れていた、知らなかった、美しい営みやドラマが存在しているかもしれない。簡単に「●●な国(音楽)だよね」とは言えない奥深さから何かを見つけていくことこそ、この旅最大の楽しみなんだ。

FIN.

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