CINRA.NET CINRA MAGAZINE CINRA RECORDS exPoP!!!!! シンラマガジン

NATURE BLISS インタビュー

日本人のその疲れに…
温泉よりもエレクトロニカ

 

世界からみると日本人は働き過ぎているらしく、ヨーロッパ各国の平均的な夏期休暇は最低でも25日間、日本はたったの5日間である。そりゃ日本人、疲れちゃって当然なんだけど、やっぱりみんな明日も仕事なのだ。そんな日々に元気を与えてくれるのが、音楽の重要な役割なのは疑いようもないものの、「愛してる」「負けないで」「ナンバーワンよりオンリーワン」などの定番メッセージで本当に頑張れちゃっているのかどうか、疑ってみる余地はありそうである。
そこで話しは「エレクトロニカ」に移るのだが、これが今、マニアックな音楽好き以外にも浸透しつつあるのは何故なのか。そこには、遠出して温泉に行かずとも、疲れちゃった日本人を癒してくれる、人と音楽の新しい付き合い方がある。毎月国内外のアーティストを世界に向けてリリースし、「エレクトロニカ」の楽しみ方を教えてくれる、NATURE BLISS のお二人にお話を伺った。

 

mondii さんプロフィール

PLOP/SPEKKレーベル主宰、(株)ネイチャーブリス代表。レーベル運営の傍ら、音楽制作、デザイン制作、英語の通訳/翻訳等を行う。好きな言葉は、「どうにかなる」。

藤井雄悟さんプロフィール
happy princeレーベル主宰、(株)ネイチャーブリス勤務。レーベル運営の傍ら、WEB製作等を行う。愛猫は、美紀と真希(ともに3歳)。

 

※文中の太字アーティストはジャケ写/キャプション付きで簡単に紹介

 

「音色を楽しもうよ」っていう聴き方を教えてくれたのが、
電子音楽やエレクトロニカでした。

 

―そもそもエレクトロニカのどんなところに惹かれたんですか?

m:音そのものの響きや質感が心地良いんですよね。歌ものの音楽を聴く時はまずはボーカルのメロディーを追いかけると思うんですけど、エレクトロニカ(と呼ばれている)音楽の場合、音のツヤとか、音と音の間なんかを感じるのが好きです。追いかけていると、変な話し、だんだん脳が覚醒するんですよね(笑)。

―音楽の「雰囲気」ではなく、音の一つ一つを楽しんでいるんですね。

藤:僕もそれに近いですね。音の一つ一つまでこだわって作られていて、頑張って機材のつまみをいじっている姿が浮かんでくるんです。「この音を出すために何時間頑張ったんだよ!」っていう。そんな努力、小室哲哉はしないじゃないですか(笑)。

―J-POPに代表される歌ものと、エレクトロニカなどのインスト音楽は聴き方が違うんですか?

藤井:僕はJ-POPも普通に聴きますけど、J-POPって歌が主役じゃないですか。だから逆に、ボーカルの背景で鳴っている音はかなりヒドい、スカスカな音をしていたりするんです。そのほうが歌が引き立つのかもしれないですけど。でもたまに、「これ、ギターもいいな」とか、ボーカル以外の音までしっかり作っているアーティストがいて、そういうのに出会うとちょっと嬉しいんです。たとえばPerfumeなり木村カエラなりを聴いたときにそう思って、、極端な話、L'Arc〜en〜Cielでも良いなって思う部分もありますしね。「音色を楽しむ」という聴き方を教えてくれたのが、「エレクトロニカ」と呼ばれている音楽のルーツとなっている音楽かもしれませんね。

―「歌がない」音楽って人気がないように思われがちですが、どんな点に魅力を感じるんでしょうか?

m:音だけだと、音の模様みたいに聴けちゃうというか、自分からその世界の中に入って行きやすいですよね。そうすると、歌が無くても歌が乗っているような気がしてくるんです。自分なりに想像する楽しみがあるというか。
あとは、たとえばバンドものの音楽には「熱さ」とか「体温」があると思うんですけど、エレクトロニカの多くはより無機質で、過剰な情感がないんですよね。そういう部分が逆に居心地が良かったりするんです。仕事してる時に薄く流しておくのに適していたり、BGMとしても扱いやすいですし。自分がリリースした音源が、CMやテレビで使われたりすることもありますし、リラックスさせてくれるBGMとしての需要はありますよね。

藤井:確かに国内外問わず、体温の高くないものが増えていますね。そういう居心地の良さはどこの国でも必要とされていると思います。J-POPだけ聴いてると、24時間恋をしなきゃいけなかったり負けちゃダメだないっていう気持ちじゃなきゃいけないって思わされそうですし(笑)。そういう中で、メッセージがないのが貴重なのかもしれませんね。

―確かに(笑)。ぼくもJ-POPは好きですけど、そのテンションに付いていける時しか聴けないかもしれません。それで今、エレクトロニカみたいに居心地の良い音楽が求められているのかもしれませんね。

m:エコとかスローライフが流行したり、世の中が疲れてきちゃっている雰囲気はありますよね(笑)。どこまでをエレクトロニカに含めるかは分かりませんが、近年は、アコースティックな楽器を使った、オーガニックなサウンドが多くなってきているように思います。海外でも、電子音響系のリリースをしていたレーベルやアーティストたちが、どんどんオーガニックな作風なものをリリースしたり、、ある種のアコースティックな「居心地の良さ」は求められているのかもしれませんね。

 

→「エレクトロニカの孫世代」が好セールスを記録中!

----------------------------------

ausくんにしてもscholeにしても、
自主レーベルなど自分たちのシステムの中で多くの人たちの共感を得ているのは
すごく素敵なことだと思います

 

―国内の若手アーティストたちの音楽にも、「オーガニック」な、居心地の良さががありますよね。ausやcokiyu(次のコンテンツにて音源付きで紹介)、CINRAでもたびたび紹介しているschole records(Akira Kosemuraharuka nakamuraなど)のアーティストたちなど、話しを聞くと驚くほど売れていてビックリしたんですが。

m:そうそう、凄い売れているんですよね! 特にausくんは、歌のない音楽にも関わらず流通会社の歴代記録に残る驚くべき好セールスだったり、ほかのアーティストたちも新人とは思えないほど売れていますよね。宣伝もほとんどできない状況だと思うんですが、確実に時代の共感を得る何かがあるのだと思います。

藤:彼らは「エレクトロニカの孫世代」といってもいいかもしれませんね。エレクトロニカ全盛期の音楽を消化した世代というか。そもそも「エレクトロニカ」っていう言葉がすごく曖昧で、30代の人と、今の若い世代の人とでもイメージが共有できないんです。2000年代初頭っていうのはまだ主流のサウンドがあったんでしょうけど、そこから先はわからないですよね。例えば、YUKIみたいなヒットチャートに入るような「主流」の人たちがエレクトロニカの要素を取り入れたり、逆にエレクトロニカの人達が主流に近いようなロックのサウンドを取り入れたりもしていますし。シューゲイザーみたいに、典型的なサウンドというのがありませんからね。

m:海外では全部「エクスペリメンタル・ミュージック」(実験音楽)って言ったりしていますし、「エレクトロニカ」ってそれだけ抽象的なんでしょうね。

―日本では「エレクトロニカの孫世代」のアーティストがどんどん出てくる状況があると思うんですが、何か理由はあるのでしょうか?

藤井:そもそもエレクトロニカって日本人っぽいと思うんですよね。中国人はアメリカに行ったら中華街を作っちゃいますけど、日本人はアメリカの食べ物を日本の食べ物にしちゃうじゃないですか。先程の話しにもあるように、そういう雑食性がエレクトロニカにもあって、「現代における代表的な日本の食事って何?」に答えられないように、「エレクトロニカの音楽性って何?」にも答えられないんですよね。大好きな日本人アーティストのkeiichi sugimotoさんもやっぱり、ミニマルミュージックからポストロックっぽい感じまで幅広く、雑食性というか、自由な感覚で音楽を作っていますね。

m:コンピューターや機材が発達して、音楽を作りやすくなったのも理由としてあるかもしれませんけど、ausくんにしてもscholeにしても、自主レーベルなど自分たちのシステムの中で多くの人たちの共感を得ているのはすごく素敵なことだと思いますね。ausくんは自身の作品が売れている上に、自分のレーベルflauからcokiyuのデビュー作をリリースしたり、毎月のようにリリースしていますけど、「この手の音楽で食べていく」っていう幻想がないところにも共感しますね。そういうフットワークの軽さがとても好きです。

―やはり全体的にはセールスも厳しいのでしょうか?

m:ausくんみたいな例外はあるにせよ、全体的には厳しいのが事実ですね。ぼくがPLOPというレーベルを立ち上げて始めてリリースしたのが、Gel:というフランスのアーティストの国内盤だったんですけど、それはバカ売れしたんです。それが2001年のことで、「エレクトロニカ」が一番売れていた時代だったと思います。それ以降は、CD自体が売れなくなっているのも影響しているとは思うんですけどね。

―それでも、PLOPやNATURE BLISSは海外の雑誌にも大々的に取り上げられたり、国内よりも海外で注目を集めていますね。

m:もともとPLOPを立ち上げた時の目標が、国は意識せずに、ただシンプルに「好きな音楽」を発信できる場所を作りたかったんです。幸い流通も良くなっていて、今では全世界に流してもらえるようになっていますし、ものすごい量のデモ音源が海外から届きますね。エレクトロニカは言葉のない音楽なので海外とリンクしやすいっていうのが良いですね。メールも英語でばっかりやってて(笑)。

―海外の評判やセールスも良かったりしますか?

m:アーティストで言えば、ツジコノリコなんかは有名ですね。やっぱり海外のレーベルからリリースしている人は認知されています。日本のレーベルから海外への輸出は全くと言っていいほどできていないので、それは今後の課題かもしれませんね。

―日本人アーティスト自体は海外での活躍も増えていますし、国境など関係ない活動を続けるNATURE BLISS の活躍を楽しみにしています。それでは最後に、イチオシのリリース情報を教えてください。

m:11月5日に、Ruibyatという日本人二人組ユニットのデビュー作を発売するんですが、これは本当に良いです!彼等も「エレクトロニカ」と呼ばれている音楽が好きなのですが、そういったカテゴリーを軽く超えるような素晴らしい歌ものアルバムになっています。で、最後に言わせてください!「エレクトロニカ」特集なので、このインタビューでは便宜上、全て「エレクトロニカ」という言葉を使っていますが、あなたの思う「エレクトロニカ」が「エレクトロニカ」であり、全ては感じるままなのです。

 

 


自動でウィンドウが開かない方は
コチラをクリック!