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ツクルの実験室 VOL.3
思いつきで、本気で本を出版してみる。

書店の本棚から『小説家への道』という本を手にとってレジへ持っていたという小っ恥ずかしい過去を今さら告白できるのは、すでにオッサン化して中学生の頃の自分を微笑ましく思えてしまうからなのかもしれない。でも、「本をつくってみたい」と思ったことがある人は、そんなに少なくないんじゃないかと思う。そして実際、アイデアが生まれ、「本をつくろう」と思い立ち、ほんとに本を出版してしまった人がいる。(有)icoccaの代表、佐野一機さんだ。そんな佐野さんに話しを聞いているうちに、中学生の自分にただの夢ではなかったことを知らせてやりたくなった。そう、ツクルことは、誰にだってできることなんだって。
(取材・文:杉浦太一 撮影:井手聡太)

 

佐野さんのこれまでのオシゴト

本をつくる
『プロデューサーズ 成功したプロジェクトのキーマンたち』(誠文堂新光社)
今回の「ツクルの実験室」で紹介するのがこの本。「エビス<ザ・ホップ>」から「鉄コン筋コンクリート」まで、プロジェクトを成功に導いたプロデューサーによるインタビュー集。佐野さんが発案とプロデュースを行なった。
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ヘアサロンをつくる
美容室「NORA」のトータルディレクション
南青山のヘアサロンの立ち上げに、コンセプト設計からロゴデザイン、内装、WEBサイトまで、統括ディレクターとして参加。
NORA

 

カフェをつくる
カフェ「HI.SCORE Kitchen」のプロデュース
渋谷区桜丘町に出現したカフェ「HI.SCORE Kitchen」。内装から料理から置かれている本から、全てに「オシャレ」を越えたライフスタイルの提案が伺える。
HI. SCORE Kitchen

 

その他、企業のお仕事も幅広くこなす佐野さん。
どうしてこんなに色んなことができるの? と思った人、いるはずです。
ということで、今回は書籍『プロデューサーズ』がどのようにしてつくられたのかを聞いてきました!

→『プロデューサーズ 成功したプロジェクトのキーマンたち』ができるまで

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『プロデューサーズ 成功したプロジェクトのキーマンたち』ができるまで

本の場合、つくろうと思ったって、
自分だけじゃどうにもできないじゃないですか。

1.アイデアがひらめく
ぼくの仕事柄、「そもそもプロデュースって何なんだろう」って疑問に思うことが多かったんです。知り合いからも、プロジェクトが頓挫しちゃったっていう話しをよく聞くことがあって、それってきっと、全体を統轄できる人がいなかったからなんですよ。それで本屋に行ってみたんだけど、どれもピンと来ないんですよね。お勉強本みたいなものばかりが並んでいる。そういう頭で理解するものじゃなくて、身体や心でわかるような本が欲しいな、ないならつくっちゃおう、スタートはそんな具合でしたね。

 

2.出版社の人に相談してみる
本の場合、つくろうと思ったって、自分だけじゃどうにもできないじゃないですか。なので、以前お会いしたことがあった誠文堂新光社という出版社の三嶋さんっていうプロデューサーに相談したんです。そうしたら、三嶋さんもプロデューサーというポジションにいる方だったからか、共感してもらえて、「じゃあ早速企画書あげてもらえる?」って。本に限らず、ぼくの場合はいつも、自分なりにどうしたらそれを実現することができるのかっていうのを考えて、まずは動いてみるっていうことをしています。

 

3.企画書をつくる
(企画書を見ながら)これはまだかなり前の企画書ですね。何度も作り直していますが、まだインタビューする人をブラッシュアップしてた時です。だいたいぼくの仕事の特徴として、そのプロジェクトのゴールイメージを最初に出すようにしています。こういうことがやりたくて、誰にどうなってもらえばいいかっていう、具体的なイメージをつくっていって、それを元にブラッシュアップして、色々と試行錯誤してっていう作業を繰り返します。

4.制作チームをつくる
三嶋さんに企画書を持っていったら、社内でもGOサインが出ました。もちろん三嶋さんのおかげなんですが、思ったよりもそこまでがすんなり行ったので、自分でもびっくりしたのを覚えています。次はスタッフィングです。三嶋さんに編集プロダクションを紹介してもらって、そこのディレクターの方とライターさんとカメラマンさんとで、制作チームが結成されました。

5.インタビューする人を考える
実は、人選はすごい悩んだんです。みんなで相談するんだけど、もちろん個々人にこういう人がいいんじゃないかっていうのがあるわけですよ。当然、意見の食い違いもあるわけで、それをひたすらぶつけ合うわけです。この作業はとても大切です。発案者ではありましたが、ぼくの中でもしっかり明言化できていなかった部分もあったんですよね。感覚だけだと、伝わる人には瞬時で伝わるんだけれども、伝わらない人にはどうやっても伝わらないので、やっぱり言語化しないといけないんだな、って思いました。指針をしっかり打ち出すことが大切だということを学びましたね。

6.インタビューして、編集する
そうやって、人選をしながら、決まった人にインタビューをしに行くという同時進行で進めていきました。ぼくの場合、自分の仕事が人から何かを聞き出すっていう、インタビューのようなものなんです。だから、どんなに大物の人でも物怖じしないっていう変な自信がありました。ビビっちゃったらいいインタビューにはならないですからね。取材をしたら、それをライターさんに起こしてもらって、ぼくがこういう風に編集してもらいたいという指示を出させてもらうっていう流れでつくっていきました。

 

佐野さんのツクルポリシー(2ページ目右カラムに入れる/多少縦長になってもOK)

ぼくが興味があるのは、何かをつくる時に、それを誰に対して向けるのか、どういう価値を提供するのか、そうするとライフスタイルがどう変わるのかっていうことなんです。iPodが出たとき、すごい感動したんですよ。自分の音楽生活がガラっと変わることがイメージできました。これだけモノが溢れているのに、それでも人のライフスタイルを変えられるってすごいことじゃないですか。青山フラワーマーケットで言えば、1コインブーケ。ブーケって今まで、1つずつ冷蔵庫から花を持ってきてつくっていたから高かったんですよ。それをはじめから店頭に並べてしまって、ダイニングブーケとか玄関ブーケとか、どこに置くと気持ち良いかをお客さんに提示する形で、スっと手軽に買えるようにする。生活に花を、っていうのはすごいなって思いました。そういう風に、何を誰に提案して、その人のライフスタイルがどう変わるのかっていうことにすごく興味があるので、自分の仕事でもいつもそれを大事にしていますね。

 

→実は最後まで、「本、出ないんじゃないかな」ってどこかで思ってました(笑)。

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『プロデューサーズ 成功したプロジェクトのキーマンたち』ができるまで

実は最後まで、「本、出ないんじゃないかな」ってどこかで思ってました(笑)。

7.タイトルを決める
原稿がほとんどあがってきたところで、「そろそろタイトル決めないとヤバくね?」という話しになりました(笑)。仮タイトルの「PRODUCERS」のままだったので、色々と考えたんですが、結局やっぱりこの言葉を入れないと、ということになって「プロデューサーズ」で決定しました。さらに、もう少しわかりやすいようなサブタイトルをつけようということになりました。構想段階の時に頭にあった「プロジェクトが頓挫してしまう」という話しを思い出して、きっとこの人たちが成功に持っていったんだろうなっていうところから、「成功したプロジェクトのキーマンたち」っていうサブタイトルが出てきたんです。

8.掲載する順番を決める
タイトルが決まったら、次は掲載する順番です。この本は合計9名のインタビューから成っています。ぼくの中でこの本はクリエイティブ業界にいる人たちだけに向けたものではなく、ビジネス書なんだ、っていう意識が明確にありました。だから一発目に、エビス<ザ・ホップ>の立山さんをもってきたんです。この中で最も知名度が高いのは、間違いなくエビスですからね。内容的にも、この本の主旨をきちんと掴んでもらうために、エビスを最初にするっていうのは決まっていましたね。次に、最後のりそな銀行の「REENAL」の藤原さんですね。インタビューしたのも最後だったし、ぼくの中でもその頃にはゴールがだいたい見えていたので、集大成的なインタビューになったんです。それからは、インタビューの内容や業種、オリジナリティを考えながら、飽きのこないように考えて、こういう順番にしていきました。

 

9.デザインしてもらう
原稿が決まったらデザインに入るわけですが、これはデザイナーの方もすごく優秀だったので、すんなり進みました。装丁の案はいくつか出してもらいましたが、最終的には黒ベースの案で決まりました。この本はクールなものというよりは、情熱のある暖かさがあるものだと思っていたので、カバーから少し中の黄色が見えるっていうものになっています。
写真、撮影しましょう

10.いよいよ出版!
実は最後まで、「本、出ないんじゃないかな」ってどこかで思ってました(笑)。本なんてつくったことなかったし、スケジュールも大幅にずれてしまったし。かっこよく「出来上がると信じてやってました」とか言えたらいいんでしょうけど、全然思わなかったですね(笑)。でも、プロジェクトが頓挫してしまっていて、そうしないためにはどうしたらいいのか、っていうのを考えたプロジェクト自体が頓挫しちゃうのは、さすがにイカンだろうって思って、その一心で踏ん張りました。書店に並んでいるのを見たときは、不思議なかんじでしたね。

10.プロモーションする!
今振り返ってみると、もっとできたな、って思うんです。本の場合、どうしても宣伝は出版社さんに任せることになるわけですが、もっとできたことがあっただろうなって思う。本屋さんのランキングに入れてもらったりしたけど、結局それは運が良かっただけなんですね。例えば、ここに出て下さった人たちが集まってイベントするだけで、めちゃめちゃ面白いでしょう? デザイナーから管理職の方まで、誰でもターゲットになる。だから、もっとできたよな、っていう勉強になったプロジェクトでした。もちろん、いつでも完全に満足して終わるプロジェクトなんてないから、次もまたやれるわけですけどね。

 

本のなかみ(3ページ目右カラムに入れる/多少縦長になってもOK)
『プロデューサーズ』に収録されているインタビュー
(掲載順・敬称略)
エビスビール エビス<ザ・ホップ> 立山 正之
映画 「鉄コン筋クリート」 田中 栄子
ソフトウェア開発 digitalstage 平野 友康
感動食品専門スーパー オイシックス 高島 宏平
Xbox 360「ブルードラゴン」プロモーション BIG SHADOW 内山 光司
絵本シリーズ くまのがっこう 相原 博之
クリエイティブスタジオ SAMURAI 佐藤 悦子
都市再生プロジェクト R-Investment&Design 武藤 弥
りそな銀行コラボレーションプロジェクト REENAL 藤原 明

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佐野さんからのメッセージ(工程の下に掲載)

何かをつくりたいって思った時に、勝手に自分の中で制約をつくっちゃう人が多いと思うんです。ぼくにしたって、本をつくっている人とか、何か大きなことをやっている人と知り合うことができるなんて、数年前の自分は想像もできなかった。勝手に別世界の住人だって思っちゃってたんですね。でも、実際会えちゃうし、友達にもなれるんです。だから、何かをしたいって思っても、どうやるかっていうのを考えて動く前にあきらめちゃうのはもったいないなと思います。ほんとに些細な一歩なんですよね。最初だけ、その一通のメールを送れるか、っていう。たとえその返事がなくてもあまり気にしないで、次にいけるかっていうのが大事。いちいちクヨクヨしてたら身が持たないですもん(笑)。

 

佐野さんの次の一手!
昔から将棋が大好きなんですよ。将棋って、判断力がすごく養われるし、大人になっても好きな人って意外に多いんじゃないかなって思うんです。でも、気軽に将棋を指せる所ってなかなかないから、結局ヤフー将棋をやる。それもまぁ面白いんだけど、やっぱり対面で座って指す将棋っていうのが一番面白いんですよね。それで、どうやったら将棋を楽しめるかな、って考えてたら、まず将棋の盤は、もっとデザインの余地があるんじゃないかな、と思ったんです。もっとカジュアルに将棋を楽しめるスタイルが提案できれば、少なくてもぼくは楽しいし、そう思ってくれる人もある程度いるんじゃないかな、と思って。それで今、知り合いのインテリアデザイナーに声をかけて、サンプルをつくってもらっているんです。自分で調べて工場にも足を運んで。うまくいけば、それをおもちゃメーカーに持っていって製品化、とかね。今年中にはやりたいなって思ってます。

 

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