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REPORT!!!!!
ロックフェス『do it 2008』
「テレビの中の音楽より
隣で鳴ってる音楽の方がメチャクチャカッコいい」

数え切れないほど多くの音楽フェスティバルが日本各地に乱立している中、東北の地、山形で開催された『do it 2008』が大きな注目を集めた。「テレビの中の音楽より隣で鳴ってる音楽の方がメチャクチャカッコいい」をキャッチコピーに、曽我部恵一BANDやMO'SOME TONEBENDERなど名の知れた出演者の他、日本各地を賑わせているインディーズバンドが大集合。その模様を、出演者自身にレポートしてもらった。

 

 

地場で闘い続けるもの達のD.I.Yフェスティバル!

文:飯田 仁一郎[Limited Express (has gone?)]

 「テレビの中の音楽より隣で鳴ってる音楽の方がメチャクチャカッコいい」―ワイヤーの「ロックじゃなければなんでもいい」と同じくらいインパクトがあるキャッチを掲げた『DO IT 2008』。都心に比べて音楽人口が格段に少ない山形で、カッコいい音楽を発信するという強い意志を持って自主企画を開き続けるSHIFTやwhat ever filmと、彼らを慕う有志達によって、地元七日町の閉鎖した映画館、シネマ旭で2日間にわたり行われた。
場所の意外性だけでなく、日本ローカル・シーンの現在を担っているバンドばかり70組以上集めたブッキングは、日本ではほとんど存在しなかったパンク・オルタナティヴ・フェスティバルの様相。開催前から話題を集め、当日はチケットを求める長蛇の列が出来た。

『DO IT 2008』の企画が立ち上がった時、この映画館を見に行く機会を与えてもらったが、唖然としてしまった。会場にはイスが敷き詰められ、壁はボロボロ、つかない電球も多々ある状態。床からはイスのねじが大量に飛び出し、スタンディングが基本であるパンク・オルタナティヴのライブが行われるとはとても思えなかった。また街の中にもかかわらず、地元住民との対話も出来ていないようす。ここで3000人規模のフェスが行われる事は難しいとさえ感じた。
けれどもふたを開ければ、イスは全て取り外され、ねじの上に床が敷き詰められ、つかない電球はオブジェとなっている。こんなにカッコいい場所は、ロックの聖地、京都の西部講堂以外には思いつかない。さらに、映画館に併設されたボーリング場のトイレを借りた 時、受付係がたくさんのDO ITの来場者を笑顔で案内していたのは、地元住民との対話がしっかりなされていた証拠であろう。SHIFTの船山は、山形の住民に若者の文化を理解してもらいたいと語っていた。その希望が、少しずつ形となってあらわれている。

会場は、1階と3階がライブ・スペース。3階は前と後ろにステージが組まれ、ぶっ通しで演奏される。2階は、映写室の隣にフードやドリンク、休憩ブース。さらに1階にある広場では、腕相撲大会や芋煮選手権等の催しが行われ、盛り上がりはオール・ナイトで続く。地元芸大生が1週間以上かけて作りあげた看板やオブジェと共に、「山形からの解 答」「貧乏上等」「変質山形」等の文言が会場中に書きなぐられており、音楽シーンは自分達が変えるという強いメッセージが読み取れる。
出演バンドは、皆、その土地で受け継いだ音楽性と、長年ローカル・シーンを作ってきた自信に溢れ、各地方独自の強烈な匂いを放っている。北海道ならThe sunやDischarming Man。東京ならZやTIALAやnemo。大阪ならワッツーシゾンビやdoddodo。京都ならFLUIDやBED。九州ならaccident in too large field。山形なら、もちろん主催バンドが。さらに、前を陣取るファンにも、バンドと各地方に対する愛情がみなぎっている。まさに威信をかけた土地対抗ライブだ。初見のThe sunの時に会場で起こった大モッシュ大会で、そのエネルギーは最高潮に達した。地場で音楽シーンと闘い続けているもの達のみで行われるD.I.Yフェスティバルが勃興した瞬間だった。

全国のローカル・シーンは絶える事なく動き続けている。それが、山形の同じくローカルで活動するバンドによって一挙に紹介されるのは、昨今の操作されたムーブメンドとは違ってアンダー・グラウンドそのもののリアリティがある。初めての開催場所で、入場規制等のたくさんの見直すべき所もあるが、出演者が一向に違わない昨今の退屈なフェスとは一線を画し、何より刺激と新しい出会いに満ちていた。中央主体のフェスが、快適と集客を追求するばかりに置き忘れてしまったものに気づかされた2日間だった。

最後に、このフェスを作り上げた主催者達と、ローカルを盛り上げ続けるバンド達に最高の賛辞を贈りたい。彼らの活躍により、10年後の音楽シーンはもっともっと面白くなるだろう。このフェスは、ミュージシャンと有志が作り上げたフェスティバルだ。ミュージシャンが、音楽を生み出す以外の事をすることに対して否定的な意見もあるが、自分達の信じる音楽を媒体に、現状の音楽シーンを打破していく事も、ミュージシャンのあるべき姿ではなかろうか。

 

Doitは始まったばかり!

文:赤倉(マヒルノ)

山形駅からの循環バスに揺られ私が着いたのは開場より少し早いAM10:00頃。1日目は生憎小雨がぱらつくすっきりしない天候でしたが、この日の舞台、シネマ旭のそこここから醸し出される「今日何か凄い事が起こる!」という雰囲気はそれを補って余りあるものでした。会場付近では緑色のユニフォームに身を包んだ多くのスタッフが(100名を超えるボランティアスタッフが参加していたそうです!)忙しそうに最終準備や出演者の誘導などを行っており、祭りの前を思わせる張りつめた空気が。私たち出演者はスタッフ用通路も通ることが出来たため、機材搬入後はあちこちをふらふらしてみたのですが、会場内は入り組んだ構造になっていて、例えばトイレに行くまでに何度か迷ってしまうほどでした。
久々に会う人たちと話しこんだりしてふと外を見ると既に入場を待つ長蛇の列。”GENKI”と名付けられたメインステージを見ると、開演を待ちきれない様子のお客さんの熱気。時計を見やるともうすぐ開演時間の正午になろうとしていました。

GENKI STAGEのトップバッターはThe Telephones。終始高いエネルギーを放出し続ける圧巻のパフォーマンスでフロアも最初からヒートアップ!フェスに引っ張りだこなのも納得のエンターテインメントショウでした。ライブという場で自分たちの音楽を120%表現し切るという事の素晴らしさを再認識させられます。次の54-71は時間の関係でさわりしか観られなかったのですが、会場を鋭利な54-71色に一瞬で変える空気感に嘆息。
続いて私達マヒルノ。機材トラブルやミスなどありました(この場をお借りしましてすいません)。とはいえ2F、YANCHA STAGEを埋め尽くす程の多くの方が集まってくれて非常に嬉しかったです。演奏やパフォーマンスに関してはあの状況でやれるベストは尽くしたつもりです。演奏中に気付いたのですが、印象的だったのは2Fステージの照明で、YANCHAステージは横方向からだけのシンプルなものなのですが、出演者が作るその影が壁に投影され様々なシルエットを映し出す様子が実に幻想的で、他の出演者がこのステージで演奏する際にはそちらばかり見てしまいました。ついついそんな見方をしてしまったbedですが、淡々と、しかし火のつくような演奏は実に素晴らしくフロアもじっくりと丁寧に編まれたアンサンブルの中に吸い込まれていくようでした。
ここで鳥肌実を観るためステージ移動。GENKI STAGEは案の定入場規制されていたようです。54-71の時にも思ったのですが鳥肌氏本人の言葉を借りると時として「圧」にも感じられる程の「何だ!?」という前傾姿勢にさせられる存在感を彼らは持っていて、それを肌でビリビリと感じられるのはやはりライブの醍醐味。緩急自在の語り口や独特のタメ、その一挙手一投足は流石のクオリティでまさに日本のレニーブルース!

ここで食事休憩のため一旦外へ。会場内は逃げ場が少なく、また外は小降りとはいえ雨だったため休憩場所にやや困っている人がちらほら。会場内の空調と充分な休憩スペースは今後の課題かもしれません。私はこのタイミングで物販や場内で出店されているレコード店も覗きに行ったのですがどこも非常な賑わいを見せており、また特にSunrain Recordsブースで配布されていた団扇は蒸し暑い会場に大当たりだったようで、この後フロアのあちこちで水色の団扇を目にすることになります。

ここからガールズバンド3連発。少年ナイフは初見だったのですがシンプルな楽曲とタイトな演奏、ハイテンションなパフォーマンス、そして会場を覆うウキウキするような空気感、どれも素晴らしかったです。自分たちの出演を終え緊張の糸も途切れ、休憩時には結構疲れていたのですが、なぜか、あるいはだからこそ?、ここで何かのスイッチが入ってしまったのか冷静さを失ってしまい、気づけばGENKI STAGE斜め上で踊り狂っていました。そんな興奮冷めやらぬままMASS OF THE FERMENTING DREGSへ。後で聞いたところによると私たち以降2Fステージの音量がぐっと上がったそうですがマスドレも超爆音、ノイジーな音の洪水。しかし元気を取り戻した私にはむしろ心地良く、壁に投影された彼女たちの姿も美しく、とても良い印象でした。また個人的ベストアクトだったのは次に観たOOIOOで、私の好きな音楽のサシスセソ(サイケデリック、シュール、スペイシー又はスピリチュアル、セクシー、ソ…ソ…そつがない)を全て組み合わせた柔軟なリズムときらびやかな音を妖艶な衣装を纏った4人のオーラが奏でるとまたも踊り狂ってしまいました。
このあたりで配られたタイムテーブルが役に立たなくなってきます。ウーネリーズはアルバムを作ってからは初めてでしたが、何度見ても足元でリアルタイムにサンプリングを制御していく様子にドキドキさせられます。新曲も素晴らしかったです。常々思うのですがウーネリーズには何というか大人の色気というかクールさというか、そういうものが節々に香り立つ感じがあって羨ましく思います。同様に素晴らしかったのがPANICSMILE。変則的なビートや耳慣れぬ音符も全てが有無を言わさぬ説得力を持つのはキャリアというより楽曲を100%あますところなく伝えようとするその姿勢に負うところが多いのでは? 弦は切れたけどテンションは切れず、エフェクターを踏む度に身のすくむほどの爆音でしたが大変格好良かったです。そして気づけばGENKI STAGE大トリのMO’SOME TONEBENDER。3人がじっくりと入場してきて期待も煽られます。タイトでソリッドでより研ぎ澄まされたアンサンブルはそのままに、ここ最近の傾向のキラキラした楽曲とこれまでのギラギラした楽曲とのバランスも絶妙で、アンコールもあり実に盛り上がりました。
最後のハードコア三昧に備えるべく小休止を挟み、主戦場となる2Fに行くと既にステージを支配していたのはnemo。セッティング? 演奏中? な極悪なフィードバックノイズにスピーカー前では確実に死んでしまうだろうと判断して後ろの方に下がりましたが、暴風雨の只中のような音空間をぐるぐる動くメンバーは幻想的な照明の効果も手伝ってとても神々しく見えました。そして主役shift登場。この時もう会場してから12時間以上経過していました。shiftは今回企画やブッキングだけでなく運営や会場設営にも全面参加していた模様で、前夜からずっと設営をしていたというメンバーとは午前中に会った時点でこそかなりぐったりしていましたが、演奏に全く影響していないどころか会場を感動とモッシュやダイブの渦に包む無敵のライブをしており、山形という場所で開催する事への思いや共演者、スタッフへの感謝を奢らず昂ぶらず、笑いに逃げず感情の奔流をそのまま語った船山氏の真摯なMCにはフロア中から地鳴りにも似た拍手喝采が沸き起こりました。

映画館という非日常的な空間と手作り感溢れる内装、「テレビの中の音楽より隣で鳴ってる音楽の方がメチャクチャカッコいい」を証明し続けた素晴らしい出演陣、東京から駆けつけた人もいるくらい熱意溢れるボランティアスタッフや、そしてイベントの趣旨を誰よりも理解していた積極性溢れるオーディエンス。その全てが各地のインディペンデントな音楽フェスに通いつめる友人も脱帽するほどの完成された内容でした。9月13、14日はsense of wonderをはじめ各地で色々な音楽イベントが行われていましたが、山形七日町はこの2日間、日本で最も濃密な時間が流れていた場所の一つだったと思いますし、そこに僅かながらも貢献出来て、ついでに美味しい芋煮も味わえて実に光栄でした。
イベント自体は続いていたものの、この規模での開催は初めてだったようで、実に、まさにdoitははじまったばかり!来年の開催も決まっているようですごく期待しています。

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