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FUKAIPRODUCE羽衣 作・演出家 糸井幸ノ介インタビュー

羽衣の作品を観終わったあとに残るのは、心地よい生への実感だ。
ライブの開放感と芝居の物語性を見事に融合した独特のスタイル。人は、FUKAIPRODUCE羽衣の作品を“ミョージカル”と呼ぶ。さながらよく出来たコンセプトアルバムを聴いているかのような感覚で体感する独特の世界は“ミョージカル”と形容せざるを得ないのだ。今日は、FUKAIPRODUCE羽衣の作・演出家である糸井幸ノ介さんにお話を伺った。

 

―糸井さんは何でも出来る人、という印象があるのですが、作・演出だけでなく、音楽も作られているんですよね?

糸井 あと、美術と振り付けです。

― 本当になんでも出来ますね(笑)。曲があって、その世界観を立体化した装置があって、役者さんがいて振り付けがあって。作品自体、ストーリーが一貫して通っているというよりも一枚のコンセプトアルバムを聴いているような感覚で観劇しています。

糸井 全体のことに関してはイメージだったり、装置の視覚的なイメージだったりなんですが、テーマ等は具体的には無いんですね。俳優が僕の言葉を口にして一時間半過ごしていくという事柄を一番大事に考えた場合、ストーリーやお話があると役柄とか出てくるじゃないですか。それを理由に頑張るっていう事じゃない頑張り方を俳優にしてもらいたいと思っています。言葉もストーリーがあると説明する部分がどうしても増えますし、そういったものは無いほうが自由に書くことが出来る。そういう風な理由から、どんどん今みたいなスタイルになっています。あんまりやりすぎてもどうかなって、悩んでるんですけどね(笑)。

― 最初からこのような作風だったのですか?

糸井 羽衣が始まった当初はもうちょっとですね、僕の方で勝手に「深井さん(羽衣のプロデューサー深井順子さん)が主宰という色とはなんだろう」って考えまして、下ネタは無しで女の子がメインで、とか、なんかちょっとだけ可愛らしい感じだったんです。歌や踊りはあったのですが、女の子っぽいムードでやっていました。最初は結構ノリノリで盛り上がったんですけど、二回三回とやってみてちょっと停滞を感じて… やっぱりその、なんというか、そんなに深井さんに言われてもいないのに色々勝手にやってもしょうがないだろうって。それで男の人も出したくなって、下ネタもガンガンやりたくなって。で、なんかこうもっとソウルフルになっていった。

― そうして出来ていったのが現在の“ミョージカル”なんですね。

糸井 はい。

― 普通のミュージカルでは身体的にものすごく訓練された、ショーとして一個一個の要素を磨いてあるものが組み合わさって出来ているのだと思うのですが、そういう機能的な美しさを目指してやっている訳ではないんですよね?

糸井 そうなんですよね。でも稽古はすごく重ねますし、本当に細かいことを色々やるんですよ。効果の薄いことを(笑)。そんなに見せるって事を大人っぽく考えていないんです。扱っている内容もパーソナルというか、自己満足的な言葉が並んでいるというか。そういう意味で、子供っぽいってことなのかもしれません。でも最近やっと自分も大人になってきて、子供っぽいノリで作っていても多少見られるようなものになってきたのかもしれませんね。

― 個人的なことをやっているというよりは、コンプレックス発信の事柄を詰めて描いているという感じがします。

糸井 技術的な問題と絡めて言うと、私の姉がバイオリニストなんですよ。幼い頃からずっとバイオリンをやっていて、育つ過程で子供時代にずっと練習するわけじゃないですか。技術って、子供時代を犠牲にして身に着けたものが多いと思うんです。音大なんて技術があるのも大前提ですし。だから食いつぶしはきくんですよ。例えば近所の子供たちに教えるとか、だけどもじゃあソリストになれるかどうかって言うところでは、本当にその人の感性がどうかっていうその勝負だと思います。
僕らは子供の頃に時間を費やしてないですけど、同じようなものはあると思うんですね。
意地悪な言い方になりますが、バイトしながら芝居して将来のことを考えるとカルチャースクールに通っちゃうとか、自分を確立する為に技術を手に入れないとっていう不安感からそういう風になっちゃうっていうのは違うのではないかと。俳優さんがそういった感性の部分を見詰めないまま不安に駆られてダンスレッスンに行くとか、そういうことではいけないと思うんです。
パンクロッカーだったはずが羽衣を観て、あのオケもうちょっとちゃんと作んないとみたいな、音楽的にはどうだこうだっていう話が始まったり。とにかくみんな不安でしょうがないんですよ。なにかができないと。だから技術っていうノリにどうしてもなるじゃないですか。

― 感性を大事に。

糸井 技術への尊敬もありますし、否定するとかではないんです。でも例えば楽器をやりたいっていう場合、それは全然いいんですけど、『お金払った価値があるものを見せてくれる技術だね』っていうような、舞台を見ている人たちのそのムード自体が、僕は持ち上げられているような気がしてならないんですね。…これってただの意地悪人間のような(笑)

―そんな事は無いです。よく解ります。
糸井さんが色々担当されている事もそうですし、役者さんが演技をしているとかではなく出来る限り大きく叫ぶ、自分の出来る表現を全部出す自己開放感、というか。とても爽快ですし、すごく元気付けられるんですよ。そういったところが羽衣さんの魅力の本質なのかな、という気がします。

糸井 ちょっと打算的に考えたら大声で言っていく事とかって、わあ… ってなっちゃう場合が多いじゃないですか。特に『アングラっぽいのは苦手』とか、何かを否定して一生懸命にやらせてっていうのだと、すごくひっかかる可能性がある気がするんですよね。まあ、羽衣の場合もそう思っちゃう人もいるとは思うんですけど。
大事なのは何か俳優さんなり、自分自身を出来るだけ肯定する、というか、もっと肯定出来るはずだという感じでやる、という事なんです。

―観ていてそれがとても気持ちよく響いてきます。

糸井 (笑)。ありがとうございます。

―本日は貴重なお話、どうもありがとうございました。

糸井 ありがとうございました。

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